あなたの会社ではセクハラ防止対策を見直していますか?

第1回 世間が許さない時代になっても、被害が減らない理由とは。

山田・尾崎法律事務所 弁護士 山田秀雄、弁護士 菅谷貴子 (構成 和栗牧子)

なぜ、セクハラはなくならないのか?

山田秀雄弁護士
「先進国の中で、日本の男性は女性に対するリスペクトがかなり低いように感じられます。それは日本社会がいまだ圧倒的に男性優位社会だからだと思います。
 根底に、男社会の中に流れる“男性優位の感覚”がいまだに色濃く残っているからではないでしょうか。特に現代では、このメンタリティの強い人が、女性に対してセクハラ発言や行為をするのではないか、と個人的には感じています。

 また、地位が高い人や、権力をもっている人の場合、周りに注意する人がいないので、裸の王様になる傾向があります。このような人がセクハラを起こす場合、『俺は例外だ!』と勘違いしている人が多いのです」

菅谷貴子弁護士
「会社での立ち位置という点では、ハラスメントは職場におけるパワーがある人が起こしやすい(プレッシャーを与えやすい)ものですので、職場におけるパワーの力学がそのまま、ハラスメントにおいても働くケースが多くあります。セクハラが減らない理由は2つあると思います。

 1つ目は、“疑似恋愛型”といわれる当事者の認識のズレから生じるセクハラ。例えば、加害者は「好かれている」と思っていても、被害者が「気持ち悪い」と感じているなど、両者の認識のズレによって生じます。

 2つ目に、従来型の組織と世間の常識のズレ。
 財務省やレスリング協会、相撲協会など、従来型の組織や団体でセクハラやパワハラの不祥事が多発するのは、組織と世間の常識とのズレがものすごく顕著になっているからだと思います。減らないというよりも、むしろ、いままで見逃されていたセクハラやパワハラが、もはや許されない状況になってきているのではないでしょうか」

DVD『判例・事例から学ぶセクハラ・グレーゾーン』全1巻より

セクハラ問題には、日本人のお酒に対するモラルの低さも絡んでいる

菅谷貴子弁護士
「お酒の付き合い方も含めて、家族等と過ごすプライベートな時間以外はすべてにおいて気を張る必要があります。裁判の判例でも認められているように、お酒の席でも職場の上下関係がそのまま持ち込まれていれば、職場と同じです。日本では『お酒の席はプライベートだ、無礼講だ!』というような感覚の人がいまだに多くいると思いますが、そろそろお酒に対する意識を抜本的に変えていくべき時期に差し掛かっているような気がします」

対策として何を行えばよいのか?

山田秀雄弁護士、菅谷貴子弁護士
「言葉だけでは伝えにくいのが、セクハラ対策です。私たちが監修したDVD『セクシュアル・ハラスメント対策シリーズ』全3巻では、会社で起こりうるセクハラを題材に取り上げ、ドラマを通してセクハラの被害者と加害者の発生から職場における防止対策までを描きました。

 また、第1巻にはドラマを観ながらできる、セクハラ防止テストもつけました。映像を観ながら、インプットとアウトプットを行うことにより、具体的に考えることができるような教材にしました」

山田秀雄弁護士、菅谷貴子弁護士
「まず、パワーの力学が働きやすい立場である社長・経営層を含め、組織全体で意識を共有することが大切です。外資系企業では社長も研修を受けるところがほとんどですが、日本の企業はここが徹底されていないケースが多い。

 また、研修対象者の出欠を取る、理解した旨の署名を取る、一度だけではなく定期的に行うなど、対策を徹底していることを示すことも大切なポイントです。
 繰り返し使えるのも、DVD研修のメリットですし、セクハラ防止意識が育つでしょう。それが、いずれ会社のリスクヘッジになることは間違いありません」

 

プロフィール
山田秀雄(弁護士)
慶應義塾大学法学部卒業、弁護士。
第二東京弁護士会副会長、「両性の平等に関する委員会」委員長などを歴任。
リスクマネジメントの観点から、セクシュアル・ハラスメントに関する著作や企業の指導では特に定評がある。

菅谷貴子 (弁護士)
慶應義塾大学法学部卒業。山田・尾﨑法律事務所所属。企業法務〔コンプライアンス・労働法(セクハラ等)・著作権等〕及び、一般民事(不動産関係・相続・離婚等)を中心に弁護活動、講演活動、著作活動を行う。