「働き方改革」は円満な家庭生活から
妻の「見えない家事負担」を減らす簡単な方法とは?
ライター 西荻美保子
夫が「育休」を取ったものの夫婦間に亀裂が
その理由のひとつに男女の意識のズレがあります。男性は「協力しているつもり」なのに、女性は必ずしもそう思っていないというケースです。
ここで、職場結婚をしたある夫婦の例をご紹介しましょう(日本経済新聞出版社 日経DVD 『働き方改革とカップルの子育て』全1巻 より)。
子供が生まれてしばらく産休を取っていた妻の聡美さん。ようやく保育園も決まり、慣らし保育の間、夫の信彦さんには無理を言って1週間の育休を取ってもらいました。育休などとても取れないという男性が多い中、恵まれているとは思うものの、育休の間にも信彦さんは家に仕事を持ち込んで資料作りをするなど、子育てに関して夫を頼りにできる実感を持つまでには至りませんでした。
1週間はあっという間に終わり、いよいよ本格的な育児と仕事の両立の生活が始まります。朝、保育園に送っていくのは信彦さんの役目ですが、お迎えは仕事を抜けられないということで信彦さんには全く頼めません。聡美さんは仕事を終えてすぐに保育園に迎えに行き、買い物をして帰り、そこから食事作りや洗濯、子供の世話をする毎日。やることのあまりの多さに「自分1人だけが子育てを背負っている」と感じ、不満を募らせていきました。また、自分だって仕事を思い切りしたい、でもできない、というジレンマにも悩まされました。
悩んだ末、自分にとって子育ても大事だけれど、仕事も大事な目標のひとつであるという気持ちを正直に信彦さんに伝え、もっと一緒に子育てをしてほしいと相談しました。
自分は十分に子育てに協力的だと思っていた信彦さんは驚きました。2人の間には、大きな意識の差があったのです。
信彦さんはこう反省しました。「聡美から相談を受けたときはとっても驚きました。正直、私は家族の中での自分の役割というか使命は全うしていると思っていたんです。子育てだって、早く帰れた日や休日は、積極的に手伝っていると思っていましたから。やれることはやっていると思っていたんですが、結局妻にとって必要だったのは手伝いではなくて、2人で子育てや家事を担うことだったんですよね」
そこで聡美さんは、あることを信彦さんに提案します。
「家事タスクのリスト化」で大きな変化が
聡美「子育てや家事ってほんとにやることが多いんですよね。そのためにやらなくてはいけない項目をひとつずつ紙に書き出してみたのです。お互いがやっていることに印をつけてみると、当然ですが私の印がほとんどになります。これで夫に家事や子育てを1人でやることの大変さを理解してもらえたようなので、効果はあったみたいです」
信彦「あー、あのリストですか。それは驚きましたよ。彼女は毎日こんなにもやることがあるのかって。例えばゴミ出し1つにしたって、私はちゃんとやっていたつもりだったのですが、ゴミを回収した後のゴミ箱に1つずつ新しいゴミ袋をセットするなど、そこまでしないと家事をしたことにはならないと知りました。言ってみれば、妻はそういう細かいところまで全部やっていたことになります。そう考えれば、とても1人じゃ回していけない。とにかく今は、自分なりに働き方をどう変えていくかを模索しているところです。子育てを分担するには、その時間を確保することが必要ですからね」
ゴミ出しなどの細かいことまでをリスト化し、聡美さんがおこなっていた家事を可視化。「目に見えない仕事」を見えるようにしたことで、信彦さんは家事の負担がいかに大変なものかがようやく理解できたのです。
チェックシートの例。日経DVD『働き方改革とカップルの子育て』に付録のワークシートより
※ワークシートは商品ページよりダウンロード可能です。
働き方改革は、意識改革。意識は何かきっかけがないと変わりません。夫婦で話し合いながら、まずは「家事タスクのリスト化」から、ぜひやってみてはいかがでしょうか。